永年勤続表彰で贈るもの
永年勤続表彰は、長く勤めた従業員の貢献をたたえる社内の表彰です。法律で決まった制度ではないため、対象の勤続年数や贈るものは会社ごとに決めます。
表彰で贈るものは、主に次の4つです。
| 贈るもの | 内容 |
|---|---|
| 記念品 | 時計・名入れの品物・表彰状や盾など、会社が用意する品物 |
| 旅行・観劇への招待 | 会社が費用を負担して、旅行や観劇に招待する |
| 金一封 | 現金や商品券を渡す |
| 休暇 | 勤続の節目に特別な休暇を与える |
どれを選ぶかで、受け取る人の満足度と税の扱いが変わります。特に記念品と金一封では、同じ金額でも課税されるかどうかが違います。先に予算を決め、そのうえで税の扱いを確認してから品物を選ぶと、あとで手直しが要りません。
永年勤続表彰の目的
永年勤続表彰の目的は、長く働いてくれた従業員に感謝を伝えることです。表彰を通じて、会社が従業員の積み重ねを見ていることを、本人にも周りの社員にも示せます。
表彰される本人にとっては、仕事の節目を振り返る機会になります。周りの社員にとっては、長く働く先輩の姿を知る機会になり、自分の将来を考えるきっかけにもなります。
目的がはっきりしていると、記念品や表彰式の形も決めやすくなります。たとえば「感謝を伝える」ことを重視するなら、品物の金額よりも、社長や上司の言葉を添えることに力を入れます。
金一封と記念品を組み合わせる
金一封と記念品は、組み合わせて贈ることもできます。たとえば「記念品と表彰状を贈り、節目の年には金一封も添える」といった形です。
ただし、金一封は金額にかかわらず給与として課税されます。記念品は非課税の条件を満たせても、金一封の分は給与計算に含める必要があります。組み合わせる場合は、それぞれの税の扱いを分けて考えます。
表彰制度で決めておくこと
記念品を選ぶ前に、誰をいつ表彰するかを社内規程で決めておきます。ここが曖昧なままだと、年によって対象者の数え方が変わり、不公平感につながります。
対象者の範囲
正社員だけを対象にするか、契約社員やパートタイムの従業員も含めるかを決めます。雇用形態が変わった人の勤続年数を通算するかどうかも、あわせて決めておきます。
勤続年数の数え方
勤続年数は、入社日から数えるのが基本です。そのうえで、次の点を決めておくと迷いません。
勤続年数で決めておくこと
- いつの時点の勤続年数で数えるか(例:毎年4月1日時点)
- 休職や育児休業の期間を勤続年数に含めるか
- グループ会社からの転籍や、再雇用の前の期間を通算するか
表彰の時期と場
表彰は、創立記念日や年度の始まりなど、毎年同じ時期にまとめて行うと準備がしやすくなります。表彰式・朝礼・社内報など、どの場で発表するかも決めておきます。記念品を当日に手渡しするなら、品物の手配は日程から逆算して早めに始めます。
記念品の予算の決め方
記念品の予算は、勤続年数に応じて段階をつけるのが基本です。節目が上がるほど金額も上げると、表彰の重みが伝わります。
勤続年数ごとに金額を決める
次の表は、10年から5年ごとに表彰する場合の設計例です。実際の金額は、会社の規模や表彰の位置づけに合わせて決めてください。
| 勤続年数 | 記念品の金額(設計例) |
|---|---|
| 10年 | 10,000円 |
| 15年 | 15,000円 |
| 20年 | 20,000円 |
| 25年 | 25,000円 |
| 30年 | 30,000円 |
勤続年数の区切りは、10年から5年ごとにしておくと税の要件とも合います。詳しくは次の章で説明します。
1年分の予算を見積もる
記念品の予算は、対象者の人数と金額を掛け合わせて見積もります。対象者は、入社日の一覧から勤続年数ごとに数えます。
| 勤続年数 | 対象者 | 金額 | 小計 |
|---|---|---|---|
| 10年 | 8人 | 10,000円 | 80,000円 |
| 20年 | 5人 | 20,000円 | 100,000円 |
| 30年 | 3人 | 30,000円 | 90,000円 |
| 合計 | 16人 | 270,000円 |
翌年以降の対象者もあわせて数えておくと、数年分の予算の山と谷が分かります。
記念品が給与として課税されない条件
会社が従業員に渡すお金や品物は、原則として給与として課税されます。ただし永年勤続表彰の記念品は、次の3つの条件をすべて満たせば、給与として課税しなくてよいとされています。
金額が相当であること
その人の勤続年数や地位などに照らして、社会一般的にみて相当な金額以内であること。
勤続おおむね10年以上であること
勤続年数がおおむね10年以上の人を対象にしていること。
前回からおおむね5年以上あいていること
同じ人を2回以上表彰する場合は、前回の表彰からおおむね5年以上の間隔があいていること。
この条件は、会社が費用を負担する旅行や観劇への招待にも当てはまります。
現金や商品券は全額が課税される
記念品の代わりに現金や商品券を渡すと、その全額が給与として課税されます。商品券の場合は券面額が課税の対象です。金一封は、たとえ永年勤続の表彰であっても非課税にはなりません。
本人が自由に選べる記念品も課税される
見落とされやすいのが、本人が品物を選べる記念品です。国税庁は、一定の金額の範囲で本人に自由に品物を選ばせる記念品について回答しています。金額の多少にかかわらず、その品物の価額を給与として課税するという内容です。
永年勤続の記念品が課税されないのは、売ったり換金したりしにくく、選ぶ余地も少ない品物だからです。本人が自由に選べる記念品は、会社から渡されたお金で品物を買うのと同じ効果があるとみなされます。そのため、カタログギフトのように受け取った人が選ぶギフトは、非課税の記念品には当たりません。
出典:国税庁「No.2591 創業記念品や永年勤続表彰記念品の支給をしたとき」/国税庁「自由に選択できる永年勤続者表彰記念品」(2026年10月18日確認)
判断に迷うときは
税の扱いは、記念品の内容や社内規程によって変わります。ここで紹介したのは国税庁が示す一般的な考え方です。実際に支給する前に、給与計算の担当者や税理士に確認してください。
記念品の種類と選び方
記念品の種類ごとに、喜ばれやすさと税の扱いを比べると次のようになります。税の扱いは、前の章の3つの条件を満たした場合のものです。
| 種類 | 向いている会社 | 税の扱い |
|---|---|---|
| 会社が選んだ品物(時計・名入れの品物など) | 全員に同じ品物を贈り、記念として残したい | 課税されない |
| 表彰状・盾・トロフィー | 表彰の形を残したい。ほかの記念品と組み合わせやすい | 課税されない |
| 旅行・観劇への招待 | 体験を贈りたい。日程を調整できる | 課税されない |
| カタログギフトなど選べるギフト | 年代や好みの違う従業員に、外れのない品物を贈りたい | 品物の価額が給与として課税される |
| 現金・商品券 | 使い道を本人に任せたい | 全額が給与として課税される |
会社が品物を選ぶ場合
非課税にしたい場合は、会社が品物を決めて全員に同じものを贈ります。表彰状や盾と組み合わせると、表彰の場で渡しやすくなります。
ただし、年代や家族構成によって、うれしい品物は人それぞれです。名入れの品物は記念に残る一方で、好みに合わないと使われないまま終わることもあります。品物を決める前に、過去の受賞者に感想を聞いておくと外れを減らせます。
選べるギフトを贈る場合
受け取った人の好みを優先したい場合は、カタログギフトのような選べるギフトが向いています。その場合は、課税されることを前提に運用を決めます。
選べるギフトを贈る前に決めておくこと
- 記念品の価額を給与に含めて源泉徴収するか、給与計算の担当者と決める
- 課税されることを、表彰の案内で本人に伝えておく
- 社内規程に、勤続年数ごとの金額と贈るものを書いておく
表彰状や盾は会社で用意し、副賞として選べるギフトを添える形もあります。表彰の形は残しつつ、品物は本人が好きなものを選べます。